日本映画には日本文化が反映されているため、私たちの国に興味を持っている人に紹介する役割を果たしてくれます。映画鑑賞をきっかけに好奇心をくすぐられて、訪日する留学生も少なくありません。
映画には食事シーンが数多く登場します。出てこない映画のほうが少ないくらいでしょう。そこではラーメン屋で麺をすすっていたり、回転寿司で皿を取ったりしますが、そこで興味を持って日本へ行ってみたい、実際にお店に行ってみたいと思う人が多いのです。
食事以外にも温泉や銭湯などは、日本独特の部分があり、外国人が不思議に思うところもあるはずです。まず人と一緒にお風呂に入る文化がない国の人にとっては、公衆浴場自体が珍しいです。さらに桶や椅子を使って体を洗うことを珍しがる人もいます。くわえて銭湯の壁に描いてある和風の絵も独特ですし、風呂上がりのマッサージチェアなども不思議に思うようです。
このように映画を通して海外からの理解を得られるため、文化庁は日本映画特集上映事業を行っています。その内容は日本の文化や社会を反映したアニメを含む映画を外国で上映し、映画祭を開くことです。国はインドネシアやミャンマー、インドなどで文化の理解を促すだけでなく、人材交流も目的としています。
日本映画の海外との違いは、わびさびにあると言う専門家もいます。激しいアクションが多いハリウッド映画とは違い、一つのストーリーに緩急があるということでしょう。これは日本の美意識が反映されていることが主な原因だと考えられますが、一つの言語と文化を共有する日本人に向けて作られたことも関係するでしょう。さまざまなルーツを持つ人が集まるアメリカでは、言語や雰囲気で理解してもらうのが難しいため、わかりやすい映像表現に頼っていると言われています。
社会性のあるテーマを扱うことが多いことも特徴ですし、それが映画の理想的なあり方だと語る監督もいます。カンヌ国際映画祭で最高賞を獲得した万引き家族は、非正規労働や貧困、不登校などの社会問題を取り扱っています。日本社会の実情を隠さずに映し出したことが評価されたという映画評論家もいます。
国際映画祭での評価という点では、日本映画はアメリカよりもヨーロッパで評価されてきました。その理由は日本映画がヨーロッパ映画に近い空気を持っているからだと考えられます。人間の多様性や家族、生死をテーマとするものが多く、それを間接的な形で表現する手法を評価しているのです。