日本の観光業は新型コロナウィルの世界的大流行(パンデミック)の影響をまともにこうむり大打撃を受けています。3月に入り国内でも新型コロナウイルスの蔓延が顕在化した頃は国際航空便を停止させるなどで対処してきました。しかしその後の推移で、全国規模での感染爆発のリスクが明らかになり、事実上の移動制限をともなう緊急事態宣言が日本全国に発令されるに至りました。観光産業は自由な交通の往来が保障されてこそ、集客を見込める産業です。年間2000万人を超える海外からの外国人旅行客による、いわゆるインバウンド消費は1兆円を超える経済効果をもたらし、日本人旅行客が廃れてしまった国内各所の観光地は、空前の旅行客需要による恩恵を受けることが出来たわけです。
もっとも最近ではインバウンド消費にはかげりがみえはじめ、ピークを過ぎた後の衰退期に入っていたとの指摘もされています。一人当たりの消費額も下り人数の増加も頭打ち状態になっていたのです。他方で低価格化したことで国内観光地各地に押し寄せる外国人旅行客による、観光地の局地的な混雑、つまりオーバーツーリズムなども問題視されるようになっていました。観光業に向ける日本人のまなざしにも一抹の不安や、厳しい視線が向けられるようになるなど潮目の変化の予兆はすでにあらわれていました。
もっとも日本の観光業でも状況の変化に手をこまねいていたわけではなく、海外からの留学生に日本文化を紹介し観光地だけに限らない日本の魅力の紹介や、欧米からの長期滞在客の招聘に力をいれるなどの対策に取り組んできました。一連の取り組みの効果は、ラグビーのW杯でも効果は実感されるはずでした。
その矢先の新型コロナウィルスの直撃です。2020年4月の訪日外国人の数は、前年比99.9%減少という空前絶後のもので、すでにインバウンドを見込んで海外からの観光客を客層の中心にしていたホテルや旅館では倒産や廃業する事例が相次いでいるというのが現状です。
これからの日本の観光産業の行く末ですが、ここ数年ほどの外国人訪日客を想定することは中長期的には困難で、日本人の国内需要の発掘に生き残る道を探るほかないといえそうです。この日本人観光客を見込んで政府は「GOTOとラベルキャンペーン」なども展開していますが、新型コロナウィルスに対するワクチン実用化や有効な治療薬開発などが無い限り、かつてのような賑わいを取りもどすのは困難というほか無い状況です。